実家を売るために、家を空っぽにしてから不動産会社へ連絡する。何度も帰省しないと進まない。そんな段取りを組む前に、先に決めておきたいことがあります。
最初は、誰の家で、誰が売却を決め、いつまでに引き渡したいかを整理すること。片付けや解体への支出は、売り方を比べてからで間に合う部分があります。
私は遠方のお客様から鍵を預かることがよくあります。電子契約の実務にも携わってきました。ただ、メールで署名できても、現地の家や荷物が片付くわけではありません。帰省を減らすには、契約の方法と現地の仕事を一緒に組むことです。
ここでは、実家売却の費用・日程・遠方からの進め方を整理し、査定から契約、入金、引渡しまでを9段階で説明します。
実家売却は、名義・意思・希望時期の整理から
売却準備の最初のメモは、次の4つで十分です。書類の名前が分からなくても、手元にあるものを確認するところから始められます。
- 名義と意思:誰が所有し、誰が売ると決めるのか。親の家なら親本人の意向から。
- 希望時期:いつまでに売りたいかではなく、いつまで住み、いつ鍵を渡せるか。
- 家の状態:居住中か空き家か、残したい物、分かっている不具合や修繕履歴。
- 連絡と資料:家族の連絡窓口と、購入時の契約書・登記関係書類などの保管場所。
家族の連絡窓口を一人に決めても、その人が他の所有者の代わりに売却条件を決められることにはなりません。名義・意思・権限に不明点があれば、先にそこを解きます。
書類は一式を探し終わるまで立ち止まらず、売主が探す書類と仲介会社が取得する書類を分けてください。親が購入したときの契約書や領収書は、片付けで捨てないことです。
売る・貸す・残すの方針自体がまだ決まっていない場合は、実家じまいを何から始めるかへ。ここからは売却を進める人の段取りです。
実家売却の費用は、総額と「先に払う分」を分ける
売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。必要な費用と、住宅ローンがあれば返済額を差し引いて考えます。しかも、代金を受け取る前に支払う作業がある。遠方なら交通費や現地対応の費用も見積もりに入れます。
- 売却の手続き:仲介手数料、紙の契約書の印紙税、登記関係の費用など。
- 家ごとの準備:荷物処分、測量、修繕・解体など。全部を必ず行うのではなく、売り方と引渡し条件で決める。
- 売れるまでの保有:固定資産税、必要な管理費や光熱費、訪問費用など。
- 売却後:譲渡所得にかかる税金の確認。売却価格そのものに一律の税率を掛けない。
金額の一例として、国土交通省の仲介手数料の案内では、物件価格1,000万円(税別)の売買で、依頼者一方から受ける手数料の上限を39.6万円(税込)としています。これは上限の計算例で、実家売却の総費用でも定額料金でもありません。800万円以下の物件には特例があるため、媒介契約前に適用条件と金額を確認します。
電子契約の電磁的記録は印紙税の課税文書に含まれません。ただし、別に紙の課税文書を作る場合は扱いを確認します。根拠は国税庁の電磁的記録に関する案内です。
見積もりでは「総額はいくらか」に加えて、「何を売却前に払い、何を決済時に払うか」を聞いてください。先払いを減らしたい場合は、その希望も売り方の比較に入れます。実家じまいで費用が発生する順番で項目別に整理しています。
売却期間は、準備・買主探し・契約後に分けて考える
いつ終わるかを考えるときは、売出しから成約までの期間だけを見ないことです。先に必要な名義の整理と、契約後の引渡し準備も日程に入ります。
- 売出し前:名義・所有者の意思、資料集め、査定比較、家族の連絡方法を整える。
- 販売中:問い合わせと内見を受け、買主を探す。価格だけでなく広告内容や内見の反応も見直す。
- 契約後:買主の融資、合意した荷物撤去や測量、登記・ローン返済などを引渡日へ合わせる。
私は購入申込みが入った段階で、価格と同時に契約日、引渡し日、融資、残す荷物まで調整してきました。高い価格の申込みでも、親の転居前に明け渡す条件では困る。価格交渉があっても、時期や荷物の条件が合う相手もいます。
「この日までに入金が必要」という期限があるなら、査定依頼時に伝えてください。担当者には、そこから逆算して、売出し・条件見直し・契約・引渡し準備をいつ行う計画かを出してもらいます。買主を探す期間と、契約後の作業期間を一つにまとめない方が、遅れそうな場所が見えます。
遠方の実家は、現地の分担とオンライン契約をセットで決める
遠方の売主に、家で何か起こるたびに来てもらう進め方では負担が大きい。私は、鍵、現地確認、買主対応、手配、進捗報告を仲介担当が担い、売主が現地へ行く回数を減らしたいと考えています。
鍵を預けても、売り方まで丸投げにはしない
鍵を預かって現地に入れることと、価格を下げたり、残す物を決めたりする権限は別です。担当者が動ける範囲と、所有者の確認を待つ場面を分けておきます。
- 所有者・家族:売却条件への同意、残す物の選別、把握している不具合の説明。
- 仲介担当:鍵の受渡し方法、訪問査定や内見の現地対応、作業の手配、写真や文章での報告について対応範囲を確認。
- 司法書士・金融機関:本人確認、登記書類、ローン返済、決済当日の対応方法を確認。
鍵を預ける際は、保管する人、内見などに使う範囲、訪問後の施錠報告、返却方法を決めておきます。現地対応に別料金がかかるのかも、依頼前に聞いてください。
売買契約はオンラインで進められる場合がある
私が扱ってきた電子契約では、仲介側が契約内容と署名する人を設定し、当事者がメールのリンクをスマートフォンで開いて内容を確認し、電子署名や同意を行う流れがあります。署名のために同じ場所へ集まる負担を減らせる方法です。
ここは二つに分けて確認します。契約書などを紙ではなく電子データで受け取ることと、ビデオ通話などで重要事項説明を受ける「IT重説」は別の手続きです。国土交通省の実施マニュアルは、電子書面の提供方法・事前承諾、閲覧・保存できる環境、IT重説で説明と質問ができる環境を示しています。
依頼先には「電子契約できますか」だけでなく、使う端末、誰が署名するか、事前に書類を読めるか、分からない点をどう質問するかまで聞いてください。親名義なら、子どもがスマートフォンを使えるだけで親の同意や権限確認を済ませることはできません。
署名後のデータは保存します。操作や保存の準備は、遠方の実家売却で電子契約を使うときの確認事項で詳しく整理しています。
登記・決済・鍵の引渡しは、契約とは別に詰める
オンラインで売買契約を結べても、登記の本人確認や必要書類、金融機関の手続き、残す荷物、鍵の引渡しは残ります。司法書士や金融機関に、面談・来店が必要か、原本は何をいつまでに届けるかを先に確認してください。
帰省する日を先に増やすのではなく、現地で本人がすることを洗い出し、同じ日にまとめられるかを相談する。そのために、契約方式だけでなく現地対応まで話せる担当者を選びます。不動産会社と担当者を選ぶ基準も、この分担を比べる材料になります。
実家売却の流れを9段階で確認する
ここからは、各段階で何が決まり、何を確認するかを見ます。査定依頼、購入申込み、売買契約、入金はそれぞれ別です。
所有者と売却意思を確認する
最初に見るのは、登記上の所有者です。子どもが不動産会社との連絡窓口になっていても、親名義の家なら、原則として売主は親です。窓口になることと、売却を決める権限があることは分けて考えます。
親本人が売却の内容を理解し、意思を示せるかも重要です。認知症の診断名だけで一律に決まる話ではありませんが、判断能力に不安がある状態で家族だけが手続きを進めるのは避けなければなりません。親名義の家を子どもが売るときの確認順と、認知症の親の家を売る前に確認することは別の記事に分けています。
相続後の実家なら、相続登記の状態も確認します。法務省によると、相続登記は2024年4月1日から申請が義務化されました。相続人や取得者が定まっていない、遺産分割がまとまっていない、といった事情があれば、司法書士や弁護士などへの個別確認が必要です。
借入れや信託の契約がある場合は、返済と売却の手続きも先に整理します。私が担当したリバースモーゲージ利用後に住み替えを断念したご夫婦の実録では、良い売却条件を探すだけでは解決しなかった経緯をまとめています。
査定額とその根拠を比べる
査定は「この金額で必ず売れる」という約束ではありません。私は査定額を見るとき、周辺でいま販売中の物件を確認します。同じ駅距離、同じ広さで買主が比較する物件がいくらなのか。その中で実家をどう見せるかまで考えて、初めて売出価格の話ができます。
金額が高い会社ほどよく見えるのは当然です。ただ、私が査定書で重く見るのは、その数字の横にある説明です。どの物件と比べたのか。どんな買主を想定しているのか。最初の価格でどの程度反応を見るのか。ここが曖昧なまま金額だけ高くても、販売開始後に困ります。
査定額が高すぎるときの見分け方では、査定額と実際の成約価格を分けて説明しています。
媒介契約を選ぶ
依頼先を決めたら、媒介契約書を交わします。書面には一般媒介、専任媒介、専属専任媒介のいずれかが記載され、国土交通省の案内にもあるとおり、依頼できる会社の範囲などが異なります。窓口を一社に絞るのか、複数社と直接やり取りするのか、販売報告をどの頻度で受けたいのか。この希望を先に整理します。一般媒介だから有利、専任だから早く売れる、と契約名だけで決めるものではありません。
仲介手数料、販売報告の方法、広告の出し方も、媒介契約を結ぶ前に確認しておく部分です。契約名だけで選ばず、担当者が販売開始後に何をして、どのように報告するのかまで聞いておく方が実務的です。
売出条件と販売準備を固める
媒介契約を結んだら、売出価格と引渡し条件を固めます。荷物をどこまで片付けるか、測量や解体をするか、修繕してから見せるかも、この段階で販売方法と一緒に考えます。
査定を頼む前に、荷物を空にし、測量や解体まで終わらせる必要はありません。荷物を残した条件で売れる場合も、建物を使いたい買主が見つかる場合もあります。確定測量の要否も、物件と契約条件によって違います。
荷物が多い家は実家売却で荷物が残っているときの進め方、古い戸建ては古家を現況で売るか、更地にするかの考え方に分けました。実家がマンションなら、管理費・修繕積立金や管理資料など、戸建てとは違う確認があります。実家のマンションを売却する前の確認順を使ってください。
販売活動と内見に対応する
販売が始まると、広告掲載、問い合わせ対応、内見へ進みます。この時点では、まだ買主も売買条件も決まっていません。
親が住んでいる家を売り出す場合は、住みながら家を売却するときの内覧・写真・引渡しの決め方で、家族と仲介担当に共有する準備を整理できます。
反響が少ない物件では、私はまず不動産会社だけが見る情報ではなく、買主が見るポータルサイトで周辺の競合物件を確認します。価格帯がずれているのか、土地と中古戸建ての見せ方が合っていないのか、内見までは入るのに成約しないのか。止まった場所で対応が変わります。
数週間ほとんど問い合わせがないのに、報告が「もう少し様子を見ましょう」だけなら、止まっている場所を確認した方がよいでしょう。価格を下げるとしても、一度下げた価格を戻すのは簡単ではありません。戸建ての売却で反響が少ないときの確認順で、販売中の見直し方を整理しています。
購入申込みを受け、条件を調整する
購入希望者が現れると、購入申込書や買付証明書が入ります。ここは売買契約の一歩手前ですが、通常、申込みだけで契約が完了したとは扱いません。
購入申込書や買付証明書に記載された希望価格、手付金、契約希望日、決済日、融資利用を確認し、前に整理した売主側の希望と照らし合わせます。残す荷物や測量・修繕の扱いも、口頭の話だけで次へ進めないことです。
価格だけで判断すると、売主にとって重要な引渡し時期や荷物の条件を見落とします。書面の文言や交渉経緯によって判断が変わる可能性もあるため、申込みを受けた後の扱いは担当する仲介会社へ確認します。
内容を確認して売買契約を結ぶ
条件がまとまったら、重要事項説明と売買契約へ進みます。購入申込みで話した内容が、契約書へ正しく反映されているかを確認する段階です。
売買代金と手付金だけでなく、決済・引渡し日、買主の融資に関する条件、残す物と撤去する物まで契約書で確認します。契約解除や違約金の扱いも読み飛ばせません。売主が把握している不具合や近隣・権利関係の事情は仲介会社へ伝え、告知内容と契約書の記載を照らし合わせます。
紙でも電子契約でも、署名する前に、話し合った条件と契約書の記載を照合します。不具合の内容や引渡し条件を、ひな形だけで済ませないことです。
国民生活センターは、消費者が所有する自宅を不動産業者へ売却した場合、クーリング・オフできないと注意喚起しています。分からない言葉や納得できない条件が残るなら、署名する前に確認する。ここは急がない方がよい場面です。
残代金決済と引渡しを行う
売買契約のあと、契約で決めた日までに引渡しの準備を進めます。荷物の撤去、測量、抵当権抹消の準備、鍵や関係書類の確認などです。必要な作業は家ごとに違います。
残代金決済では、買主から残代金を受け取り、所有権移転登記の手続きと鍵の引渡しを同日に行うのが一般的です。住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消も関わります。司法書士、金融機関、仲介会社と時間や必要書類を合わせるため、売主だけで日程を決めることはできません。
契約日と決済日は別です。契約日に売却条件を固め、決済日に代金と所有権を実際に動かします。
売却書類を保管し、確定申告の要否を確認する
決済が終わっても、売買契約書や費用の領収書は捨てません。親が購入したときの契約書、リフォーム資料、仲介手数料や測量費などの資料も、手元にあるものをまとめて保管します。
国税庁によると、土地や建物の譲渡所得は、収入金額から取得費、譲渡費用、特別控除額を差し引いて計算します。ただし、支払った費用がすべて譲渡費用になるわけではありません。
確定申告の要否、利用できる特例、取得費が分からない場合の扱いは、税務署または税理士へ資料を示して確認してください。
売却代金ではなく譲渡所得から考える順番、取得費、特例の確認先は、実家売却の税金で詳しく整理しています。
最初の依頼では、価格と一緒に「任せたい仕事」を伝える
査定を頼むときは、名義、希望する引渡し時期、家の状態、現地へ行ける頻度を伝えてください。そのうえで、誰が現地へ行き、何を報告し、どの段階で所有者の判断を求めるのかを聞く。金額だけの比較では見えない、担当者の仕事が見えてきます。
小金井市や周辺の実家なら、小金井市で家を売るときの相場・売り方と実務例へ。壊す・片付ける・値下げする判断を急ぐ前には、家の売却でやってはいけないことを確認してください。
法令・公的手続の参照資料は2026年9月13日に確認しました。契約成立・解除は弁護士、登記は司法書士、税務は税務署または税理士へ、個別事情と書面を示して確認してください。
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