親名義の家を、子どもが売りたい。そう相談されたとき、私はいきなり査定の話には入りません。まず確かめるのは、家の名義と親御さん本人の意思です。子どもが不動産会社との窓口になることはできますが、それだけで売主が子どもに変わるわけではないからです。
順番を間違えると、「先に名義を変えればいいのでは」「兄弟の誰か一人に任せればいいのでは」と話が先へ進みます。ところが名義変更には税金の問題があり、親御さんの判断能力によっては委任とは別の手続きが必要です。この記事では、その話を一つずつ分けます。
最初に確認するのは、この4項目です
- 登記事項証明書に記載された所有者
- 親御さん本人に売る意思があるか
- 売却内容を理解して判断できる状態か
- 子どもや兄弟のうち、誰が連絡窓口になるか
古い権利証や固定資産税の通知だけで決めず、まず現在の登記を取ります。法務省の案内では、登記事項証明書で所有者や所有権を取得した原因、抵当権などを確認できます。親の単独名義と思っていたら共有だった、ということもあるので、家族の記憶より先に書類を見た方が早いです。
子どもが窓口になることと、家を子どもの名義にすることは別です
親御さんが売却内容を理解し、自分の意思を示せるなら、子どもが査定依頼や日程調整、現地対応を担当する形は珍しくありません。契約まで代理で進める場合は、誰に何を任せるのかを確認し、委任の範囲を曖昧にしないことです。民法第99条も、代理人が権限内で本人のためにした意思表示は本人に効力が生じると定めています。
売るためだけの名義変更は、先に税務を確認する
「子どもの名義に変えてから売れば簡単」とは限りません。国税庁は、親の土地や家屋を無償で子どもの名義に変更した場合、原則として子どもが贈与により取得したものと扱うと案内しています。売却の段取りだけを理由に名義を動かす前に、司法書士と税理士の両方へ確認してください。

私が担当したのは、息子さんが家族の窓口になったケースでした
以前、母親名義で購入した家の売却に関わったことがあります。家族の窓口は息子さんの一人で、ほかの兄弟はその方に任せていました。売却資金はすべて親のために使う。家族の方針も、そこはそろっていました。
細かな手続き名は、今の私の記憶だけでは正確に言えません。だから、この事例を「名義を変えれば売れる」という正解には使いません。ただ、今でも覚えていることがあります。誰が窓口になるのか。売ったお金を誰のために使うのか。その二つが家族の中で整理されていたことです。
兄弟のうち一人が窓口になるなら、任せる範囲まで決めます
窓口を一人にすると、不動産会社とのやり取りはかなり楽になります。ただし、「全部任せた」の一言だけでは、価格を下げる場面や買主から条件が出た場面で話が止まります。私は、少なくとも次の線引きは家族で共有してもらいます。
- 不動産会社からの連絡を受ける人
- 売出価格や値下げを親御さんへ確認する方法
- 買付や契約条件を兄弟へ共有する方法
- 売却代金の振込先と、親のために使った記録を残す方法
兄弟の同意が法律上必要かどうかは、誰が所有者か、共有名義かで話が変わります。ここでも最初に登記です。そのうえで、法律上の権限とは別に、後から「聞いていない」を残さないための共有をしておきます。
一人で抱える判断と、任せられる作業を分ける
一人っ子など、家族内で作業を分けにくい場合でも、すべてを本人が処理する必要はありません。所有者の意思、売る時期、売出価格や条件、売却代金の使い道は家族側で確認します。一方、鍵と室内の確認、写真と広告、内見対応、契約書類の準備は、不動産会社などへ任せられます。登記、税金、成年後見などの判断は、それぞれ司法書士、税理士、弁護士へ確認する領域です。
紙を一枚用意し、「親へ確認すること」「自分が決めること」「依頼する作業」の三列に分けると、抱えているものが見えます。一人で最終判断を引き受ける場面と、一人で専門作業まで抱えることは別です。
遠方なら、問い合わせ件数だけで判断しない
遠方の家では、売主が現地の反応を直接見られません。販売報告では件数だけでなく、買主が何と比べたのか、価格・建物・条件のどこで止まったのか、次に何を変えるのかまで確認します。家族に残すのは最終判断で、その判断に必要な現地情報を集めて報告することは仲介担当者の仕事です。

親御さんの判断能力が落ちている場合は、委任状の話だけで進めません
親御さんが契約内容や売却後の生活への影響を理解できない状態なら、「子どもだから代わりに署名できる」という話ではありません。早い段階で司法書士や弁護士へ相談し、必要な制度を確認します。
親御さんの判断能力に不安がある場合は、委任状の準備を進める前に、親の判断能力に不安があるときの確認順も分けて確認してください。
すでに成年後見人、保佐人、補助人が本人に代わって居住用不動産を処分する場合、裁判所は家庭裁判所の許可が必要と案内しています。現在は施設や病院にいても、以前住んでいた家などは居住用不動産に含まれる場合があります。査定を取る前後で構いませんが、売買契約の直前まで放置しない方がよい部分です。
不動産会社へ相談する前の確認表
| 確認するもの | 見るポイント |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 所有者、共有持分、抵当権 |
| 親御さんの希望 | 売る意思、希望時期、売却後の住まい |
| 判断能力 | 契約内容を理解し、自分で意思を示せるか |
| 家族の窓口 | 誰が連絡し、誰にどこまで共有するか |
| 売却代金 | 振込先、管理者、親のために使う記録 |
| 専門家への質問 | 委任、登記、贈与税、成年後見の要否 |
全部そろってから相談する必要はありません。分からない欄を残したまま持ってきてください。不動産会社で確認できることと、司法書士・税理士・弁護士へ渡すことをこちらで分けます。逆に、登記や税金まで不動産会社だけで断定する担当者なら、いったん立ち止まった方がいいと思います。
よくある質問
親名義の家を、子どもだけの判断で売れますか?
子どもが連絡窓口になることと、売却を決める権限は別です。まず登記上の所有者と親御さん本人の意思を確認します。代理で契約まで進める場合は、委任の内容を司法書士等へ確認してください。
売却前に、親から子へ名義変更した方がよいですか?
売りやすさだけを理由に名義変更を先行させない方が安全です。親の不動産を無償で子どもの名義に変えると、原則として贈与と扱われる可能性があります。登記と税務の両面を先に確認してください。
兄弟全員の同意が必要ですか?
まず登記で、親の単独名義か、兄弟を含む共有名義かを確認します。法的に誰が売主になるかとは別に、窓口へ任せる範囲、価格変更、売却代金の扱いは家族で共有しておく方が、後の行き違いを減らせます。
親が認知症でも家を売れますか?
診断名だけで一律には決められません。契約内容を理解して意思を示せる状態かを個別に確認します。成年後見人等が本人の居住用不動産を処分する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
売却代金を子どもの口座へ入れてもよいですか?
家族内の都合だけで決めず、売主、振込先、管理方法を契約前に確認してください。親のために使う予定でも、口座の名義や資金移動には税務・法務上の論点が出ます。個別の扱いは税理士や司法書士へ確認します。
名義変更を決める前に、ここまで整理します
親名義の家は、最初から手続きの答えが見えている案件ばかりではありません。登記を見て、親御さんの意思を聞き、家族の役割を決める。そこで分からない点だけを専門家へ渡せば、余計な名義変更や手戻りを避けやすくなります。小金井市と周辺の実家売却で何から確認すればよいか分からない場合は、まずこの順番で書類と家族の方針を整理してみてください。
参考にした公的資料
裁判所「成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可」
公的資料は2026年7月26日に確認しました。個別の登記、税務、意思能力については、司法書士、税理士、弁護士等へご確認ください。
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