空き家になった親の家を前にすると、「売ってしまうのは惜しい。貸せば家賃が入るのでは」と考えるのは自然です。
ただ、私は家賃だけを見て貸すと決めるのは勧めません。貸すための修繕や募集費用がかかり、入居後は貸主としての管理が続きます。あとで家族が使いたくなったとき、すぐ自由に戻せるとも限りません。
結論からいうと、売却価格と家賃を比べる前に、誰かが住む予定、その期限、貸す前に必要なお金、毎年の負担、契約と税務の条件を並べるべきです。明確な利用予定がなく、貸主を続ける覚悟もないなら、「家を残せるから」という理由だけで賃貸を選ばない方がよいと思います。
売る・貸す・残すは、得られるお金より先に「続ける責任」が違います
- 売る:所有と管理を終え、代金を受け取る。手放した後は家族が使えないため、再利用の予定と名義人の意思を先に確認する
- 貸す:所有を続けながら賃料を受け取る。修繕、募集、設備対応、入居者対応、空室時の負担を貸主が引き受ける
- 残す:今すぐ売却も賃貸もしない。判断を保留できる一方、点検、換気、通水、清掃、防犯などの管理は続く
「何もしない」は、費用も責任も発生しない選択ではありません。国土交通省も、空き家を所有し続ける場合は外部・内部の点検、換気、通水、清掃などを定期的に行う必要があると案内しています。
小金井市も、管理されていない空き家が防災、衛生、景観などへ影響するおそれを踏まえ、適正管理と利活用を空家等対策計画に位置付けています。売るか貸すかを決められない間も、管理だけは止めない方がよいです。
判断材料1 家族が使う予定を「いつか」ではなく年月で決める
最初に確認したいのは、家族の誰かが本当に住む予定があるかです。「子どもがいつか使うかもしれない」では決まりません。誰が、何年後に、どのような状態なら住むのかまで言葉にします。
親が施設へ入った後の家なら、親本人の意思、戻る可能性、施設費や維持費を誰が負担するかも分けて確認します。子どもが窓口でも、名義人の代わりに自由に処分できるわけではありません。
判断材料2 売却価格と家賃ではなく、同じ期間の手取りを比べる
売却査定がいくら、賃料査定が月いくら、という二つの数字だけでは比較できません。売る場合は売却に必要な費用と手取り、貸す場合は空室、管理委託、修繕、保険、税金などを差し引いた後の金額を見ます。
ここで大事なのは、同じ建物状態で比べることです。売却は現況のまま、賃貸は大きく直した後という条件なら、数字の見た目だけで賃貸が有利に見えることがあります。何を直す前提なのか、誰が負担するのかをそろえてください。
判断材料3 貸す前に必要な工事と、貸した後の管理を引き受けられるか
古い実家は、荷物を出せばそのまま貸せるとは限りません。給湯器、水回り、電気設備、雨漏り、建具、鍵など、入居者を迎える前に確認する項目があります。直す範囲と費用が見えないまま「貸せば家賃が入る」とは考えない方が安全です。
荷物についても、全部捨ててから査定を取る必要はありません。売却案と賃貸案の両方を見てもらい、残す物、処分する物、設備として残す物を分けた方が手戻りを減らせます。
判断材料4 貸した後、家をいつ自由に戻せるか
「まず貸して、必要になったら返してもらう」と簡単には決められません。賃貸借契約には普通建物賃貸借と定期建物賃貸借があり、終了や更新の考え方が違います。
国土交通省は、定期建物賃貸借を、契約で定めた期間の満了により更新されず終了する制度と説明しています。ただし、契約方法や事前説明などの条件があります。将来家族が戻る可能性があるなら、賃料だけでなく契約方法まで賃貸管理会社や専門家へ確認してください。
判断材料5 相続後の空き家は、貸す前に税務条件を確認する
相続した空き家では、売却時に使える可能性がある税の特例があります。ただし、誰でも使える制度ではありません。建築時期、相続後の利用状況、売却期限、売却代金などに要件があります。
国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」では、対象となる売却の要件に、相続から譲渡まで貸付けに使われていないことなどが含まれます。賃貸に出した後で売る予定が少しでもあるなら、先に税理士または税務署へ個別に確認してください。
小金井市の家でも「東京だから貸せる」とは決めない
小金井市内でも、駅からの距離、築年数、間取り、駐車場、接道、設備の状態で賃貸需要は変わります。東京都内というだけで、希望する賃料ですぐ借り手が見つかるとは限りません。

売却査定と賃料査定は、同じ現況写真と資料を使い、どの修繕を前提にした数字かまで聞いてください。高い数字を出した会社を選ぶのではなく、その数字になる物件条件と、外れたときの見直し方を確認します。
迷っている間に、先にやること
- 登記名義と、意思を確認すべき人を整理する
- 家族が使う可能性を「誰が・何年後に」で書く
- 現在の建物状態と荷物を写真に残す
- 同じ現況条件で売却査定と賃料査定を取る
- 貸す前の工事費、毎年の支出、空室時の負担を出す
- 賃貸借契約と売却時の税務条件を個別に確認する
- 保有する場合も、次に判断する日を決める
家を残すこと自体が悪いわけではありません。問題は、目的と期限がないまま管理だけが続くことです。迷うなら三か月、半年など家族で次に話す日を決め、その間の管理担当も決めてください。
古い家で、貸す前に大きな修繕が必要そうなら、先に解体する必要があるかも含めて売り方を比べます。古いからすぐ壊す、貸すために全部直す、のどちらも先に決めない方が選択肢を残せます。
まとめ 貸せるかではなく、貸し続けられるかで考える
空き家になった親の家は、売るか貸すかの二択ではありません。期限を決めて管理しながら、判断材料をそろえる時間を取ることもできます。
私なら、家賃が取れそうかだけでなく、修繕費を出せるか、管理を続けられるか、家族が使う時期があるか、貸した後の契約と売却条件まで並べます。そこで初めて、売る、貸す、期限を決めて残す、のどれが自分たちに合うかが見えてきます。
制度・税務・契約に関する記載は2026年7月28日時点の公式情報を確認しています。適用条件や契約方法は物件と家族の状況で異なります。税理士、司法書士、賃貸管理会社、宅地建物取引業者などへ個別に確認してください。
よくある質問
Q. 空き家は、売却査定と賃料査定を同時に頼んでもよいですか?
同時に比較して構いません。ただし、同じ建物状態で、売却に必要な費用と賃貸前の工事費を分けて出してもらいます。高い査定額や高い募集賃料だけで決めず、その数字になる条件も確認してください。
Q. 荷物が残っていても、売るか貸すかを相談できますか?
荷物が残った状態でも、現況確認や査定は始められます。全部処分する前に、家族が残す物、売却・賃貸の資料になる物、設備として残す物を分けた方が手戻りを減らせます。
Q. いったん貸した家を、後から売ることはできますか?
売却できる可能性はありますが、入居中か空室かで想定する買主や売り方が変わります。賃貸借契約の内容も影響するため、貸す前に将来の売却可能性まで不動産会社と確認してください。
Q. 売るか貸すか決められないので、空き家のまま残してもよいですか?
保有も選択肢です。ただし、空き家の点検、換気、通水、清掃、防犯などの管理は必要です。次に家族で判断する日と、それまでの管理担当を決めてください。
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